例年よりも2週間も早く梅雨が明け、すでに猛暑続きの中、アウトドアの達人であるT店長と初めて釣行しました。Robert Redford監督、Brad Pitt主演のモンタナ州ミズーラを舞台にしたフライフィッシングの映画、River Runs Through Itが上映された頃(1992年)にT店長はフライフィッシングを始められたそうです。私がルアーフィッシングからフライフィッシングに転向したのはその少し前のことですから、フライフィッシングの経歴は大体同じ。スマートフォンはiPhone、パソコンはMacBookにiMac、以前にジムニーを所有されていたこともあるそうです。驚いたことにあのMOSSブランドの美しいテントもお持ちであるとか。嗜好が私に極めて似ていて、まるで10年前の自分と会話しているようでした。
釣行したのはほぼ並行する林道が近付いたり、離れたり、また林道との高低差も複雑に変化するあの危険な渓流の源流域。2年前に遭難しそうになった沢ですが、登山の経験も豊富なT店長にとれば、それほど危険な場所ではなく、普通の源流域と思われたかもしれません。
この日はT店長をこの源流域に案内することに徹しました。私は20回ほどしか持参した新しいバンブーロッドをキャストしていません。しかし、不思議なことにイワナは自分が釣り上げたような錯覚がありました。実際、1匹目は私のロッドとフライで釣り上げられています。フライを落とす場所は少し違いますが、10年前の自分といろんな面で似ている人に同行したわけですから十分にあり得ることではあります。店長が着用している帽子はBarbour製、フィッシングベストも私のものと同じOrvis製でした。
この時期に釣行するのは随分と久しぶりでした。特にこの沢では以前、真夏に釣行した時に強力なクモの巣にティペットを切られるという奇妙な体験をしたことがあります。そんな話をしていると、今回も実際に6Xのティペットが摩擦により、クモの巣に切られる現象が起こりました。魚がいそうな場所にはクモの巣があり、キャストする前にクモの巣を取り除こうとすると、魚に察知されて釣れないし… 悩ましい問題です。ティペットが切れなくても、大量のクモの巣がリーダーやティペット、フライに付着した状態では釣れる魚も釣れません。
「クモの巣でティペットが切れる」をキーワードに検索してみると、フライの雑誌社のページがヒットしました。そう言えば、90年代後半に定期的に購読していた「フライの雑誌」でこの件に関する興味深い記事を読んだことがあるのを思い出しました。その記事が載っていたのは1998年季刊第41号であり、「クモの糸のナゾ ほんとうに、クモの糸でティペットは切れるのか?八人に聴きました」というタイトルでした。今は亡き西山 徹氏を含む8人中、自身でティペットが切れることを体験した人は3人でした。考えられる原因は摩擦などの物理的なものとクモが巣を張る時に出す粘着物質との化学作用、そしてクモ自体が切断する場合も可能性としてはあるということでした。
この沢では同行者以外の釣り人をこれまで見たことがなかったのですが、河原にベイトフィッシャーマンの痕跡がありました。この前に来た時はなかったので、この数週間のうちに他の釣り人が入渓していると思われます。プールに付いていた大きなイワナはほとんど全部、お持ち帰りされた可能性があります。ベイトフィッシャーマンが好んで釣りをする場所には反応がなかったように思います。