iPad To Be Released on May 28 in Japan

2010年5月7日、カリフォルニア州クパティーノ、Apple®は本日、iPad™(アイパッド)が5月28日に日本および、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、英国で販売開始となることを発表しました。5月10日(月)より、これら9カ国のすべてのAppleオンラインストアで、iPadの予約販売が始まります。米国でのiPadの販売台数はすでに100万台を超え、App Storeからは1,200万本以上のアプリケーションが、新しいiBookstoreからは150万本以上の電子書籍がダウンロードされています。

【価格と販売について】
iPad Wi-FiはオンラインのApple Store® (www.apple.com/japanstore)で、iPad Wi-Fi およびiPad Wi-Fi + 3Gは Apple直営店と選定されたiPad正規販売店を通じて、それぞれ販売されます。AppleのiBookstoreが含まれるiPad用のiBooks™アプリケーションは、5月28日よりApp Storeから無料でダウンロードすることができます。

Appleは、オーストリア、ベルギー、香港、アイルランド、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランドそしてシンガポールでも6月にiPadを発売する予定です。これらの9カ国での具体的な発売日、価格そして予約販売の詳細については、後日あらためて発表します。

原文がみつからなかったので日本のサイトから引用しました。「iPad Wi-FiはオンラインのApple Store® (www.apple.com/japanstore)で、iPad Wi-Fi およびiPad Wi-Fi + 3Gは Apple直営店と選定されたiPad正規販売店を通じて、それぞれ販売されます。」ということは、オンラインのApple Store®を含め、iPad Wi-Fi + 3Gの通信販売は行わず、対面での販売のみと解釈しました。

AppleのiBookstoreが含まれるiPad用のiBooks™アプリケーションは、5月28日よりApp Storeから無料でダウンロードすることができます。」この文の前半が今一つ理解できません。国内からもiBookstoreから電子書籍がダウンロードできるのでしょうか。当初は英文書籍のみかもしれませんが、ダウンロードできると良いのですが。国内での価格はまだ発表されていません。

Random House Fears Price Wars

MacRumors.comがFinancial Timesの記事を引用し、「世界最大の出版会社であるランダムハウスはAppleのiBookstoreに参加する契約を未だ交わしておらず、4月3日のiPad発売日までに契約しそうにない。というのは、eBookの価格設定に際してAppleが採用する、代理店モデルは価格競争を誘発し、出版会社の利益が損なわれる恐れがあるからだ。」とレポートしています。

アメリカの場合はもともと紙の本は、日本と比べて高いし、本は図書館で借りて読むもの、本を買うとすれば、それは自分が読むのではなく、贈り物として買うという傾向があるように思います。教科書や専門書は別で、そうした書籍は高くても必要に迫られて購入せざるを得ません。その高価な本が、わざわざ図書館に行かなくても自宅のソファでくつろぎながら、電子版を安く簡単に入手できるとすれば、一気に習慣が変わる可能性があるのではないでしょうか。

iPadが発売になる2010年は日本で「電子書籍元年」になるのではないかと、昨日、NHKが午後9時の報道番組で特集していました。日本の出版会社は、電子書籍の普及に対してどのような対策を講じているのでしょう。出版会社がiBookstoreで電子書籍を販売するということは、従来の書店や取次店の存在意義がなくなる訳です。日本では紙の本はもともと安い訳ですから、電子書籍にすればさらに安く販売できるはずです。マンガはすでに電子書籍化しているものも多くあるようです。

辞書はどうでしょう。紙の辞書は書店で販売されているけれど、電子辞書は家電量販店で売られています。しかし、パソコンで使用するCD-ROMの電子辞書は本屋さんでも売られているし、如何にもソフトウェアっぽいものはパソコン売場でという、不明瞭が線が引かれているような気がします。

MacRumors.comの記事は以下のようにまとめています。

Rather than allowing retailers to set their own pricing for books, Apple is building on its existing App Store model to allow publishers to set retail sales prices, with Apple taking a 30% cut of revenue. Apple has argued that the change will allow publishers to create more sustainable business models than the current system of relying on the willingness of distributors such as Amazon to sell content at little profit or even a loss, and a number of major publishers have accepted Apple’s proposed tradeoff in view of their long-term viability. Random House, however, remains unconvinced and is still working with its authors and agents to assess the potential impact of a shift to Apple’s agency model.

小売店に価格設定をさせるのではなく、制作者である出版会社が価格を設定する、App Storeと同様のビジネスモデルをAppleは提案しています。売上の30%を代理店であるAppleが徴収し、残りの70%が出版会社の収益になります。既存のビジネスモデルでは、小売店が僅かな利幅で不当に安く、場合によっては赤字になるような価格で販売することもあるとか。Appleが提案するモデルは、既存の方法と比べてずっと持続可能な(=長期的に見て損をしない?)事業を構築することができるとのこと。Appleの代理店モデルに移行した場合にどのような影響があるのか、ランダムハウスは著者や取次店と検討中であるとか。

アメリカでは出版会社が価格を設定するのでなく、小売店や取次店が価格を設定しているとは知りませんでした。手元にある、洋書を見ると、ISBNは書いてあっても定価がどこにも印刷されていないものが多くあります。シールが貼ってあるだけです。昔は今の日本と同じように、裏表紙に価格が印字してあったように記憶しているのですが。ペーパーバックは今もアメリカとカナダの定価が印字してあります。

iPad発表の前日に情報を漏らしたMcGraw Hillはどうなったのでしょう。私は毎年、春から夏にかけて、McGraw HillやCambridge University Press、Oxford University Pressなどの洋書(テキストブック)を数万円単位で発注していますが、もし、これら書籍が電子化されれば、書籍にかかる出費は大幅に削減できます。また、使い方も変わってくるはずです。重いテキストを持ち歩く必要もないし、全文検索や音声、動画が使えれば、マルチメディアとしての可能性は計り知れないものがあります。

Steve JobsがiPad発表前に「これまで関わったすべての製品の中で最も重要である」と言っていたように、iPodやiPhoneよりも、社会経済的な影響力は大きいのかもしれないと改めて思うようになりました。iPodが普及してCD walkmanやMDプレーヤーは姿を消し、車内はおろか、室内でもCDを聴かなくなりました。iPhoneを入手して以来(Apple信奉者である私の場合はもっと前から)iPhone以外の携帯電話には全く興味がなくなりました。iPadは教育市場を主なターゲットにしているという点において、重要なのかと私は勘違いしていたのかもしれません。教科書や専門書だけではなく、iPadで新聞や雑誌、小説や随筆に加えて、マンガも読むとすれば、それは出版物すべてということになり、確かにインパクトは大きい。

追記:AppleInsiderも同様の記事を書いています。ランダムハウスはiBookstoreでの書籍の販売に慎重になっているが、4月3日発売日までに合意に達する可能性を排除した訳ではないといった内容です。さらに従来の書籍販売モデルに関して次のようにまとめています。

Under the traditional business model, resellers have bought books from publishers at discount prices, and then marked them up to make a profit through sales. But Apple’s approach would have the publishers set the prices paid by consumers — something Random House executives are concerned could lead to considerably lower prices, and thus lower profits.

従来のビジネスモデルでは、再販業者が割引価格で出版会社から書籍を購入し、利益分を上乗せして販売するとのことです。Appleの提案する方法であれば、消費者が支払う価格を出版会社が設定することになり、それは大幅な価格下落と利益の圧迫に繋がる恐れがあり、その辺りを懸念しているとか。

さらにTimesが懸念しているのは、Appleと収益を分け合うこと、そして出版会社にとってたいへん貴重な消費者情報をAppleと共有することになるということ。今のところ、App Storeでアプリを購入しても、「そのアプリを買った人はこれも買っていますが、必要ありませんか。」と言ったおせっかいな広告はAppleからは一切ありません。