Nikon Binoculars 7×50 7.3º IF WP Tropical

Nikon Binoculars 7x50 7.3º IF WP Tropical

1970年代に京都四条通りにあった某カメラ店で買ってもらったNikonの双眼鏡。天体観測用の双眼鏡ならNikonかFujinon製で、できるだけ対物レンズの口径が大きく、倍率は控えめが良いと、当時、参加していた天文同好会の先輩会員から聞いて、選んだものです。去年の金環日食、金星の日面通過観察時は対物レンズに自作フィルターを装着して活躍してもらった双眼鏡。40年近くの年月が経過しましたが、プロフェッショナル仕様の防水性能のおかげで、カビや曇りはありません。特に保管方法に気を遣った記憶はありませんが、ほとんど経年劣化がありません。この時代の日本製双眼鏡は造りが非常に良いと思います。

Nikon Tripod/Monopod Adapter

三脚アダプターも去年、新調しました。双眼鏡本体はずっしりとしていて、手持ちで星が見られるのは数分が限界なので、長時間の星観察には三脚は必須です。対象物の高度が高いと三脚固定では姿勢に無理がありますが、薄明時の彗星観察なら問題ありません。

Nikon Binoculars 7x50 7.3º IF WP Tropical

クラシックなポロプリズム式。フォーカスは左右を別々に合わせるIF式。星しか見ないので、一旦、焦点を合わせると滅多にさわることはありません。

Nikon Binoculars 7x50 Tropical

対物レンズの口径は50mmで集光力が優れているのか、微光星もよく見えます。しかし、この前の小惑星、2012 DA14はなぜ確認できなかったのでしょう? 倍率がもう少し高い方が良かったのかもしれません。来月のPan-STARRS (C/2011 L4)と年末の大彗星、ISON (C/2012 S1)は7×50のこの双眼鏡が活躍してくれるはず。

今でもこの双眼鏡(L字スケール入り)の後継モデルが販売されています。


こちらはL字スケールなしのモデル。

天体観測用としてはNikonは7×50 SPの方を推奨していますが、性能差はそれほどでもないと思います。

三脚アダプターは専用品をお勧めします。

Record-Setting Asteroid Flyby — Part 4

2月16日、午前2時頃、吹雪の中を晴れ間を求めて高速道路を西へと向かいました。地球に接近する大きさおよそ45mの小惑星を眼視で確認できるかもしれないという、一生に一度あるかないかのチャンスです。自宅周辺の天候条件が悪ければ、条件が良い所に移動して観察すれば良い、またその価値は十分にある珍しい現象です。小さな車に撮影機材一式を積み込んで、天気予報が好ましい大阪から神戸、三田方面を目指して出発しました。

大阪北部は晴れていましたが、光害の影響で暗い天体は見えないだろうから、吹田のジャンクションから中国自動車道に入り、三田方面を目指しました。金曜の午前から一睡もせずに、神戸三田プレミアムアウトレット周辺の暗くて西の空が開けている所に到着したのは午前4時過ぎ。

急いで設置したポータブル赤道儀(Vixen POLARIE)にNikon D7000を取り付け、西南西の空にカメラを向けました。装着したレンズは普段、星の撮影には滅多に使わないNikkor 35mm f/2D。ISO1600、露光30秒、F2.2で追尾しながらインターバル撮影。15枚、撮影する度にカメラを少しずつ西へずらしました。自動撮影中は、別の三脚に固定したNikonの双眼鏡(7×50 7.3° IF WP HP Tropical)で移動する暗い天体を探し続けました。iPadにダウンロードしておいた小惑星の軌道予想チャートを参考にしながら、探し続けましたが、一向にそれらしきものが見つからない。小惑星が最も明るく見えるのは午前4時半頃。時計はすでに午前5時を回っている。どんどん暗くなるので時間と寒さとの戦いです。

McDonald's Kobe Kouzudai

ここまで画像が一枚もないのはなぜ?カメラの設定に問題はなかったのですが、レンズの向きが… 思っていたよりも換算52mmのレンズはずっと画角が狭く、予想軌道を大きく外していました。すべての写真に小惑星は写っていません。高速で移動する明るい人工衛星なら双眼鏡で追尾し、写真にも写っていましたが、目的とした小惑星ではありません。赤道儀で追尾するということは、いくら時間をかけて連写したとしても、フレーム内に被写体が入っていなければ、目的とした被写体を記録することはできません。写真撮影に失敗したことに気付いたのは、建物がアメリカンなマクドナルド神戸上津台店で朝食中のこと。NASAが予測した2012 DA14の軌道は本当は大きくずれていて、前日にロシアに落下したあれではないのかと疑っていました。

ヨーロッパでは前日ではなくて同じ日に起こった現象です。こういう滅多にない偶然は一体なんなのでしょう。最近、火球の目撃情報も異常に多い気がします。今年は大きな隕石(=小惑星)が空から降って来たり、地球の軌道と交差しそうになったり、記録的な明るさの大彗星が太陽をかすめたりする、そんな珍しいことが連続して発生する宇宙を実感する年なのでしょうか。

Kobe Kita Poka Poka Onsen

気分転換を兼ねて、iPhone 5のカーナビ(Google Maps)で近くの「温泉」を検索。ヒットしたのがグリーンガーデンモール内にあるこの北神戸ぽかぽか温泉。雪がちらつく寒い朝でしたが、午前8時の開店と同時に入浴すれば、冷えきった身体はぽかぽか。露天風呂は有馬温泉と似た黄金の湯。高品質療養泉だそうで、眠気も飛んで疲労回復したので、神戸三田プレミアムアウトレットに立ち寄ってから、午後から三宮方面へ。そしてポートアイランドのIKEAを経由して、帰路についたのは太陽が西の空に沈む少し前。

小惑星の眼視での確認と写真撮影には失敗しましたが、来月の彗星撮影の良い練習になったと思っています。快適な温泉を見つけることもできました。

Record-Setting Asteroid Flyby — Part 3

Asteroid 2012 DA14

天気予報によると明日、土曜日は残念ながら曇り。小惑星2012 DA14が地球に最接近する午前4時26分頃の西の空をSkySafariでシミュレートし、Previewでキャプチャーした画像に予想される軌道を描いてみました。Heavens Aboveで生成したチャートをもとに、直線軌道を描いています。東経135°辺りから見た予想軌道及び時刻ですが、東経140°nの東京から見た場合であってもそれほど変わりはありません。最も暗い星で7.7等星。

この極めて珍しい現象を観察できるのは北半球では東ヨーロッパから東アジアにかけての地域。アメリカ大陸から西ヨーロッパにかけての地域は昼間になるので見えません。日本にいる我々にとっては絶好の機会となりますが、すべては天候次第。

最接近時でも7等星ぐらいと暗いので、観察するには暗い星が鮮明に見える双眼鏡や望遠鏡必須となります。双眼鏡を使用する場合であっても三脚に固定した方が見つけやすいと思います。難易度は相当、高くなりそうなので、前日にでも予想される軌道を確認する練習が人によっては必要。写真撮影する場合は予想チャートを参考に待ち構えるようにしてカメラを準備しておくのが宜しいかと思います。赤道儀があれば、恒星モードで追尾しながらインターバル撮影すれば、小惑星が高速で移動する様子を捉えやすいのではないかと考えています。

画像はFlickrからリンクしていますので、オリジナルサイズの画像をiPadなどにダウンロードすれば便利に使えるはずです。またとない機会なので、土曜の早朝は晴れ間を探しながら移動するかどうか思案中です。

Record-Setting Asteroid Flyby — Part 2

2月16日(土)の早朝、04:25:49(JST)に地球中心部からおよそ34,100kmの至近距離に最接近する小惑星、2012-DA14は、日本各地から双眼鏡や小型の望遠鏡で観察できるようです。予測されている小惑星の軌道に誤りがあり、地球に落下するようなことでもない限り、残念ながら肉眼で観察することはできません。静止衛星の軌道の内側を接近通過する大きさ約50メートルの小惑星を観察できる機会はそんなに多くはありません。今、地上に暮らす人々のほぼ全員が人生初の経験になるはずです。

NEAFlybyChart

上のチャートはHeavens Aboveで観察予定地の緯度と経度を地図から指定して小惑星の見え方を生成したもの。午前5時頃にしし座の3.32等星、Chertanの少し南側を通過するようです。

2012da14positions

観察予定地から見た小惑星の位置と光度及び高度を示す表も自動的に作成してくれます。 高度を示す赤字は地平線の下、緑が観察可能高度。最も明るくなるのが南西の空、コップ座辺りを移動する午前4時30分頃で予想光度7.0等。この日の日の出時刻は06:41、北斗七星の柄杓の辺りまで高速で移動する様子が双眼鏡で観察できるかもしれません。土曜の夜明け前は天候に恵まれれば写真撮影しようと考えています。光度が暗くて双眼鏡で確認できなかったとしても、失敗しなければ写真に記録されるはずです。しかしながら、最接近時で予想光度7.0等なので、写真撮影は至難の業です。星図と小惑星の予想経路を熟知しておかないと、双眼鏡で捉えるのも容易ではありません。

Suzuki Jimny JB23W-6


久しぶりに洗車したばかりのJimnyで小惑星の観察を予定している場所に向かいました。

Asteroid 2012-DA14 Observation Site

観察予定地の南西の空。小惑星が最も明るく見える午前4時半頃の高度は28.5°なのですでに山の上に見えていることでしょう。三脚に固定したカメラは暗い星が写るよう、ISOは少し高めに設定して露出30秒〜60秒でインターバル連続撮影。カメラの向きを小惑星の動きに合わせて時々、移動させながら200〜300回、自動でシャッターを切り、現像した画像をスタック(合成)すれば、日周運動とは異なる軌跡を描く暗い星が確認できるのではないかと期待しています。使用するレンズ焦点距離はどの程度が良いのか、思案中。尚、16日早朝は月明かりによる影響はありません。

Record-Setting Asteroid Flyby — Part 1

NASAによると、2月15日(UT)に直径およそ50mの小惑星が地表から27,680km以内の至近距離を通過するそうです。その軌道は通信衛星や気象衛星などの静止衛星の軌道よりも高度が低いとのこと。地球に落下する可能性はないと何度も言っていますが、それだけ繰り返して強調されると逆に落下の可能性が少しはあるのではないかと疑いたくなります。

この程度の大きさの小惑星がこれだけ地球に接近するのは1990年代から定期的に観測を始めてから初めてのことだそうです。ベテランの天体観察者なら19:26(UT)に最接近するこの小惑星、2012-DA14を小型の望遠鏡で捉えることができるかもしれないとのことです。しかし、高速で通過するので追尾するのは極めて困難。光度は7等から8等になると予想されています。最接近時刻は日本では2月16日(土)夜明け前の早朝になります。自信のある方は確認できるか試してみるのも面白そうです。この光度であれば、光害の影響が少ない暗い場所で写真撮影すれば、写るかもしれません。但し、この時刻に日本から見えるのかどうかは不明。(2月5日追記:午前4時頃に南西の空から昇り、日の出までの3時間近くをかけて、北斗七星方面に移動する様子が双眼鏡や小型の望遠鏡などで観察できるようです。)

これだけ地球に接近するということは、地球の軌道とこの小惑星の軌道がほぼ交差するということであり、僅かでもそのタイミングがずれていれば、衝突することになります。ウィキベディア(日本語版)によれば、「仮に衝突したとしても、衝突地点は南極地域であると推定され、海に落ちて津波が発生してもそれほど大きくはならないと考えられている。」とのことです。マヤの暦を根拠に去年、世界終末論を唱えていた人達、またそれを信じていた子供達はこの小惑星についてご存知なのでしょうか。